玉音ちゃんradio 第18回「矢野顕子、忌野清志郎を歌う」前編

DJ・鎌田浩宮

あったりまえだった。
アッコちゃん、キヨシローの事、忘れちゃいなかった。
何年経っても、忘れなかった。
本当に、キヨシローと、彼の歌を、愛しているんだなあ。
しかも、ただ愛してるんじゃあ、ない。
こうした企画を、具現化する力。
それは、彼女の信念や行動力。
そして、彼女ならではの、新曲と聴きまごう、渾身のリアレンジの力。

アッコちゃん、ありがとうございます。

2013年2月6日に、忌野清志郎をカヴァーするCD
「矢野顕子、忌野清志郎を歌う」
が発売される。
今から、どきどきしてる。

アッコちゃんが、どれだけの思いを込めて歌っているか、想像に難くない。

アッコちゃんがキヨシローの曲を、公けの前で初めて披露したのは、1982年に決行された
「ヘンタイよいこ白昼堂々秘密の大集会」での
「トランジスタ・ラジオ」。

煙草嫌いなアッコちゃんが、
「煙草の煙 とても青くて」
という歌詞を
「たい焼きの煙」
と替え歌して歌ったのは、有名な話。

逆に、この時キヨシローはアッコちゃんの
「ひとつだけ」
を初めて歌ったんだ。

 

その後は、こんなやり取りも。

RCサクセションが1985年に「ハートのエース」というアルバムで
「山のふもとで犬と暮している」
という曲を発表すると、それを受けてアッコちゃんが1991年に
「LOVE LIFE」というアルバムで、
「湖のふもとでねこと暮らしている」
という曲を発表。

こっちが、山!

こっちは、湖!

どちらも、素晴らしい。
そしてどちらも、キヨシローらしい、アッコちゃんらしい。
しかもすごいのは、お互いに曲を交換して歌っても、なんだかとてもしっくりきそうなのだ。

そして1993年の「LOVE IS HERE」というアルバムでは
「湖のふもとでまだ猫と暮らしている 」
という、続編のような曲まで発表するほど。

アンサーソングというよりかは、
「幼なじみのきよしちゃんはそんな風に暮らしてるんだね。私は今、こんな暮らしなのよお」
という形の、曲による文通のような交換日記のような、もうたまらないやり取り。

 

それから1992年には、こんなジャムも。
RC活動休止後、メンフィスでブッカーT & the MG’sと創ったアルバム
「Memphis」の中の曲を、テレビ朝日「ミュージックステーション」の中で、2人によるデュエットでやっていたんだなあ。

この曲も、忌野清志郎を代表する1曲だと思う。
「世間知らず」
正にキヨシローのことだ。
僕も、永遠に世間知らずでいたい。
世間知らずで、何が悪いのさ。

タモリと言えば、この前の「いいとも」でアッコちゃんに
「あなたの奥田民生『すばらしい日々』のカヴァーは素晴らしい」
と言っていた。

とにもかくにも、不勉強な僕。
この頃、もっと沢山、2人のジャムはあったかもしれないです。

 

 

アッコちゃんがキヨシローの曲を正式にアルバムに収録したのは、2000年に発売された「Home Girl Journey」。
RCサクセションの
「海辺のワインディング・ロード」
を、大胆にリアレンジしている。

アッコちゃんの方。
ちゃんと
「ベイベー」
と歌ってくれてる。

RCの原曲は、こっちだぜ、ベイベー。

 

 

そして2002年の夏、遂に2人は
「イマワノ・アキコ」
として、2つのフェスに出演。

その曲目は、というと。

FUJI ROCK FESTIVAL ’02
1. 夜の散歩をしないかね
2. Money Song
3. ごめんなさい Oh Yeah
4. ブーアの森へ
5. けんかでデート
6. イヤシノウタ
7.彼女の笑顔
8. また会おね
9. 海辺のワインディングロード
10. 多摩蘭坂
11. ひとつだけ

RISING SUN ROCK FESTIVAL
1. 夜の散歩をしないかね
2. 春咲小紅
3. 彼女の笑顔
4. けんかでデート
5. 海辺のワインディングロード
6. 多摩蘭坂
7. ひとつだけ

いやあ、俺、どっちも観ていないんだ。
バカ。
俺の、バカ。

それでは、その曲たちの源流を、辿ってみよう。

夜の散歩をしないかね

美しいメロディー。
どうしてこんな美しいメロディーを書けるんだろう。
これに、アッコちゃんのピアノが、過度な装飾音を排してバッキングする。
聴きたくって、たまらない。
初期から中期にかけての、RCサクセションの名曲。

けんかでデート

原曲は、あの有名なポールとポーラ。
この曲とは別に、2人が、バラード調の曲を何かカヴァーしていたら、どんなにすごかったろう。

イヤシノウタ

黒木瞳と共演した缶コーヒーのCMの中で歌ってた曲。
アッコちゃんは「癒し」という言葉が流行った時に、
「癒しというのは、表面だけを対処療法してるだけで、好きな言葉じゃない。私がしたかったりされたいのは、慰めとか、そういったもの」
と発言して、僕も大きく頷いたもんだったさ。
キヨシローも、同じ考えだったから、カタカナでこんな歌を歌ったはずさ。

彼女の笑顔

この曲も「Memphis」から。
こういった典型的なブルーズ・コード進行も、アッコちゃんの好みだったんだねえ。
アッコちゃんのホンキートンクがかったフレーズに、キヨシローのストレートな歌詞が交じり合う。
ああ、時間がとろけそうだ。

また会おね

アッコちゃんの代表曲。
キヨシロー作曲の選曲が、渋好みなのに対して、アッコちゃんの方は、王道の代表曲。
どちらからの要望で、この曲を取り上げたのかなあ?

春咲小紅

この映像、尻切れトンボで終わっちゃうんだけど、あまりに幸宏さんと大村憲司さんが格好いいので、掲載します。
今回紹介した曲の中では、1番世間に知られた曲かも。
だって、NHKの歌番組にも出たんだもんね。

多摩蘭坂

いやいや、これもRCの代表曲。
こちらは、今回リリースされるアッコちゃんのアルバムにも入ってる。
楽しみだ!

 

 

そして2006年。
アッコちゃん、デビュー30周年記念として
「はじめてのやのあきこ」
というミニアルバムがリリースされる。

このアルバムは、これまでのアッコちゃんの既発表曲を、様々なミュージシャンとのデュエットという形で、セルフ・カヴァーしている。
その中の1曲が、「ヘンタイよいこ白昼堂々秘密の大集会」で伝説となった
「ひとつだけ」
を2人がデュエットしてるんだ。

アッコちゃんはこの後、闘病生活に入ったキヨシローのために
「きよしちゃん
という曲を創り、自身の数々のライヴで歌ったことは、エプスタのこちらにて大特集した。
この曲が「音楽堂」というアルバムに収録されたのは、キヨシローが虹の向こうへ旅に出た後の、2010年だった。

そして同じ2010年、キヨシローの未発表音源が1枚のアルバム
「Baby #1」となり発売。
これを聴いたアッコちゃんは、こんな素晴らしい曲があったの?と感激、この中の1曲、
「恩赦」
を自身のライヴで歌うようになる。

 

それじゃあ、アルバムが待ちきれないので、原曲の方を次回、後編にて聴いていこうではないか。

収録曲は
1. 500マイル
2. 毎日がブランニューデイ
3. デイ・ドリーム・ビリーバー
4. 誇り高く生きよう
5. 雑踏
6. 多摩蘭坂
7. 胸が張り裂けそう
8. 約束
9. 恩赦
10. セラピー
11. ひとつだけ(矢野顕子 with 忌野清志郎)

それでは、また来週!


2013.01.25